trivial records

trivial recordsは2006年12月〜2011年7月に田北/triviaが綴っていたブログです。
すでに更新していませんが、アーカイブとして公開しています。

ふて寝

最近つぐみは6時起き。たくみな攻撃により、ふと目を開けてしまうと最後、目の前3cmくらいに、にやけ顔。

そこから「よいしょ、よいしょ」とぼくの頭の下に手をねじ込み、持ち上げ始める。う…んと起き上がると、嬉々として手を握り、リビングへ連れていかれ。遊んでいる隙を見て横になろうものなら叫び出す…。昨日はその後、これにCD2枚を同時に突っ込み、取り出し不能に。アタモと目が合い、硬直→号泣→ふて寝。:写真

(2時間しか寝させてもらえなかったぼくは)通勤。箱崎と天神で会議を終えて、大橋へ。藤原さんから公開講座にお誘い頂いた。藤原研に着くと、軍艦島を研究されている建築家の中村さん、「採取」の達人、写真家・藤田さんみかん小屋に寄り添いながら腕を振るう料理人・加茂さんがいらっしゃる。(濃い面々…)

しばし談笑の後、講座のため移動。タイトルは「21世紀の『建築探偵VS考現学』入門」。藤原さん自身の考現学的スタンス、そして今和次郎氏・吉田謙吉氏・村松貞次郎氏らの関わりから、考現学の有り様をあぶり出し、バラック装飾社等も引き合いに出しながら一通り。締めは痛快な藤田節…。

講座の内容はさておき? 研究室にて出てきた話。「芸術」情報設計学科の学生に、日比野克彦・川俣正・たほりつこの御三方の名前を知っている人が何人いるか、調べられたそうで。具体的には書きませんが、びっくりする数字で。例えばぼくも、先日の講義の中で「トリエンナーレ」と「ビエンナーレ」の違いを学生に尋ねたら、手が挙がったのが、約30名中、2名くらい。「ぼくらの預貯金が戦争に使われていることを知っている人?」という問いにも少ないリアクション。

先日開催された風景デザイン研究会のテーマは「文化的景観」。例えばその参加者の中に、「世間(セケン)遺産」「考現学」「地元学」、そして「文化経済学」の実践を見据えている人たちがどれだけいただろうか。
その会に参加したT嬢の感想。配られた資料を見て、「これって日比野さんの言ってることと同じですよね」と。そして「なぜ九州だけなんですか?」と。その現象をもたらしたベクトルに気付ける学生が、いったいどれだけいるのだろうか。

一方、古典的なアート・サーキットに異を唱える「現代アート」に携わる人たちが、「まちづくり」の上澄みだけさらって、反発する。その小さな営みに、どんな理由を見出しているのだろうか。

3日ほど前のこと。某所の会議の席でぼくの話題が出てきたと、とある方が教えてくれた。その他にもいくつか。

ぼくが小国を離れて大学に来た件について、いろいろと推測?がなされているらしい。なんというか。光栄ですけどね。そんなとこで名前が出てくるのは。でも、逐一いやいや…というのも少々つかれるような、感じです。

ただね。ひとつだけ言うなら、上記の「違和感」を誰が解決してくれるんだろうか、というとこです。

誰もしてくれないんだったら、ぼくが動くしかないですよね。そして、熱意を持って必要だと言ってくれる人がいたら、それに応えたくもなる。小国に移住した時もそう。何も変わらない。

ただそれだけなんですけどね。
残念ながら、ぼくはそれでしか動けないんです。

自分の仕事が好きかと聞かれたら、分からない。好き嫌いとか戦略とか、そんなこと考える余裕はない。明日生きてる保障なんてどこにもないし。
余裕があったら、今頃ちゃんと皆さんに挨拶状くらい出してます。(すいません)

以上、この話はもうおしまい。

bgm: Aliens / KIRINJI (youtube)

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こっちに来てから週1日は必ず休みをとることにした。写真は先々週末のもの。おにぎり持参で朝から近くの海へ。自転車で2、3分のところ。

 

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こんな感じで林を抜けていくと、海が目の前に拡がる。つぐみは前に乗っている。

小国にいる時は、周囲を囲む山々がつぐみの原風景になればいいなと思っていたけど、突如現れたこの風景も、悪くない。「記憶」として風景が刻まれるのは、つまり「想い出」として振り返られる風景は、だいたい4歳以降に体験したものだと言われている。3年後にぼくらはどこに居るのか、ということが、その頃ぼくが何をしているか、よりも大切なことだと最近思える。

この日は、昼からフォトグラファー・Sさんとバッグ作家・Iさんと一緒にランチ。いらっしゃい福岡ということで食事会を開いてくれた。Sさんは、ぼくらの挙式を撮ってくれ、ある時はぼくの仕事のモデルにもなってくれた人。Iさんとは多分ネットを介して出会ったと思う。その時は今のような仕事をされるとは思ってもいなかった。確実に前に進んでいくIさん。さらに前に進むということで、お手伝いをすることになった。楽しみな仕事がひとつ増えた。

さて、今週からぽつぽつとかきはじめます(るぞ!)。

bgm: 日々の音色 / SOUR (youtube)

海の近く

えらく時間が空いてしまいました。5月中旬に福岡に居を移しました。(ただし未だ引っ越しは完了しておらず…)

山の近くから海の近くへ。箱崎キャンパスまで、自転車と地下鉄を使って40分ほど。二度と会わないたくさんの人とすれ違いながら通勤。福岡らしい生活のリズムが流れ始めました。

 

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もちろん、つぐみも(おそろしく)元気です。とにかく食う。食う。食う。そして、走り、おどる。
Mさんから前髪ぱっつんしてもらって以来、なんだか大人びてきた気が。

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で、おしらせのつづき。

まず、杖立ラボについて。
ラボのサイトではお知らせしましたが、今までの事務所を閉鎖して、杖立内のアパートの一室に移転しました。今までのようには開放はしていません。。

一応代表のままですが… 今後はより一層、九工大の景観研究室が主導していくかと思います。そろそろ新たなプロジェクトが動き出す模様。ぼくは今まで程ではないにしても、月に1・2回は顔を出しながら、杖立のまちづくりには関わっていくつもりです。この6年を振り返ると… なんて書き始めると涙でめがねが曇るのでやめときます。

そして、南阿蘇えほんのくにについて。
2月に事務局長を辞して、今後はアドバイザーみたいな立ち位置で関わっていきます。こちらは熊本県立大の皆さんが頑張ってくださることに。

置き土産として企画したのが「南阿蘇えほんのくに図書館」。図書館のない村に図書館を作るプロジェクト。ハコの図書館を作るのではなく、まちの図書館を作る。お店や自分のおうちに絵本を置いて、それを公開する。ある人は縁側に、ある人は子どもたちが使っていた子ども部屋に。それぞれの小さな図書館がつながって、大きな村の図書館になる。

本は借りるのではなく、交換する。絵本の中には「オモイデしおり」。表現の善し悪しだけではなく、蓄積された想い出が、絵本を選ぶ手がかりになる。そしてその想いは交換されていく。そんなプロジェクトです。

ぼくは、図書館で手にした本に添付されていた「図書カード」が好きでした。うす汚れた茶色の紙に記された鉛筆の痕跡。「あ、あの子が借りたんだ」とか「お前の兄ちゃんやん!」とか。初めて手にする本の手触りが、初めてではない気がする時。そして次に連なる自分の名前。ぼくが手にしたものは、本であり、本ではなかった。「オモイデしおり」は、そんなことを考えて、出てきたものです。

このプロジェクトを企画・運営していく中で、様々な問題が出てくるはずです(出てきています)。個人情報はどうなるかとか、大切な本は交換できないとか、変な人が来たらどうしようとか。貸すだけでいいじゃないかとか。

南阿蘇えほんのくには、設立当初から「みんながやさしくなれる」というコピーが掲げられています。残念ながら、まちづくりは、性善説のみでは成立しません。しかし、それでもなお目指すべきは、性善説を受け入れる器量だと考えます。

このプロジェクトが持続していく以上、そこに関わる人たちは、やさしさに向けられた外圧と戦わざるを得ません。道半ばで離れた身分でおこがましいですが、どうにかこうにか「やさしさを伝えていく術」を考え抜いて欲しいと思っています。そう、例えば、エンデがファンタジーの力に託したような。

ついでに?杖立ラボの活動が掲載されている本の紹介。

■(祝!重版)風景のとらえ方・つくり方 -九州実践編-
杖立ラボの設立背景となった「杖立景観整備基本計画」から2008年に至るまで、主に景観整備とそれにまつわるローカル・ガバナンス、学生のプロジェクト等について、12ページにわたり紹介・解説されています(活動年表もあり)。

■(高いので学生はきついかも)全国の地域ブランド戦略とデザイン
〜地域ブランド・自治体のイメージアップに貢献したグラフィック特集〜
グラフィックワークはこちらの本に。ロゴマーク決定から、プリン伝説プロジェクトまで。杖立でのブランディングの考え方も紹介されています。

June 26, 2009