trivial records

trivial recordsは2006年12月〜2011年7月に田北/triviaが綴っていたブログです。
すでに更新していませんが、アーカイブとして公開しています。

黄色いポストを片手に
なかなか日記も書く時間がないですが。そんなこっちゃいかんですね。まずは東北サウタージュ。
9月25日〜27日に小国町商工会の事業の一環で、宮城・山形に視察に行ってきました。視察メンバは、小国の若手6人。ぼくが(一応)最年少なので? 現場でのいろいろは先輩方に任せて雑感を。SさんとかksmさんとかYくんのブログを参考に…。
今回訪れたのは、鳴子温泉・東鳴子温泉(宮城県大崎市)、肘折温泉(山形県大蔵村)、銀山温泉(山形県尾花沢市)、瀬見温泉(山形県最上町)。初日は仙台から鳴子へ。鳴子の試みは、鳴子スタイルGOTEN GOTEN アート湯治祭のページから見ることができます。鳴子は、小国町と同様、ツーリズムでがんばってるとこですが… というか、ツーリズムって意外と厄介な概念なんで、そのへんを。
基本的に、ツーリズムという言葉は「観光の新しいかたち」として用いられます。観光(sight-seeing)とツーリズム(tourism)とを分けて考えられているケースが多いです。
歴史まで遡るとここに書ききれないくらいになるので、簡単に説明すると、日本においては、訪れる側が観光地に求めるニーズの変化と、観光(見せ場づくり)に必死になる地域(受け入れ側)の限界との接点から推進されてきた概念で、特に欧州(とりわけ英・仏)で育まれてきた滞在スタイルが参考とされています。「見た目」だけでは満足しなくなった訪れる側の「体験」や「交流」のニーズと、もうちょっとありのままを楽しんでもらっていいし(楽しんでもらえるはずだし)、環境やこれからの社会のこともちゃんと考えましょう、という受け入れ側の思想が基礎になっています。
グリーン・ツーリズムという概念を農水省が推進してきたことからも分かるように、「農」をテーマに、農山村と都市との交流という意味合いで使われることが多く、農山村部での観光振興の形式としてツーリズムという言葉が多用されます。でもこれからはさらに、訪れる側のニーズに適応させていくために都市部でも頻繁に使われることになるでしょう。ツーリズムを地域振興施策(つまり地域にお金を落とす仕組み)として先鋭させていく動きも活発になるでしょう。そんなこんなで(強引?)現在では、各地域に応じて「ツーリズム」という新しい観光の在り方を表現した言葉が、拡大解釈・活用されて用いられているという感じです。
で、鳴子が実践しているツーリズムの本質は、温泉地として育まれた「湯治文化」を基礎としているところです。新しいツーリズムという観光の在り方を、地域に元々存在する「湯治に見られる交流スタイル」から援用しているのです。地域にとって必然的な(リアリティのある)選択で、素敵です。
一方、小国町はツーリズムの先進地と言われています。今回も行く先々でそう言われましたが、でも内実は小国町はこの「先進性」が大きなハードルとなっているように感じています。小国町はツーリズム大学(ツー大)というテーマで「学習」による交流を基礎として、地域にツーリズムという概念が拡がりました。
約10年継続しているツー大の実践は、小国町に多くの恩恵をもたらしています。現在、小国町で活躍している人たちの多くは、ツー大関係者という実情があります。そして、ツー大をきっかけに訪れた識者が、小国町を外部に知らしめてくれています。ツー大で出逢って結婚した人もいるくらいで…。でもその一方で、10年という長い年月は、ツーリズム・コミュニティとも言えるネットワークを堅固にしてきています。
基本的に、大学(のようなもの)の「学習」によりツーリズムの価値を理解できる人たちは「識者」と呼んでもいい人たちです。意識的にならずに普通に生活しているほとんどの人たちは、いわゆるツーリズムの価値は理解できません。ツーリズムという言葉自体が多種多様に用いられているものなので。
生活者に理解してもらう、あるいは生活者の学習意欲に任せるというスタンスではなく(そうならざるを得ない田舎の事情も分かりますが)、「自分たちの生活とのつながりを感じる仕組み」をデザインしないと、ますますツーリズム・コミュニティは形骸化していきます。なんだか頭の上をツーリズムという概念がぐるぐる回っているような… そういう感覚になってしまうのです。
そして、生活者個々人で「誰かが進める」ツーリズムの成果を定義し、実際の恩恵を感じ得ない状況になってしまうのです。ひいては、ツー大に関わった人でも、ツーリズム・コミュニティから距離を置きたくなる感覚まで生じてくるケースが出てきます。ツーリズムのブランド化、と言い換えてもいいかもしれません。もう少し成熟すると、ツーリズムというブランドだけと繋がっているような人たちも出てくるはずです。
小国町のツーリズムは、今まで「学習」で蓄積してきた資産を生活者の視点から「実践」していくフェーズにあるように思います。それも、個々人の学習意欲や、関わった人の振る舞いに任せるだけでなく、地域として「分かりやすい・リアリティのある」ビジョンを示すことが肝要に思います。その時にこの鳴子の実践は、非常に参考になるものではないかと思うのです。
写真は、鳴子の商店街にて。こうやっていろんな方々からお話を聞きました。ありがとうございました。
朝一で見る笑顔
2日目は肘折温泉に宿泊。朝になると朝市で、おばちゃんたちでいっぱいに。笑顔が印象的。
農の設え
3日目に訪れた銀山温泉にて。歴史的建造物群は、まぁいいとして、ところどころに垣間見えた「農」の風景が印象的。小国の市街もこういう風景がところどころに見えるといいのになぁと。
農のバッグ
これも「農」。こんなバッグを使って農作業なんて。想像しただけでもわくわく。
なめこ
これも山形の「農」。まるでランドアート。なめこの原木栽培です。
アパッチ!
鳴子の商店街にて。
仙台空港から鳴子に向かう国道沿いは、なんというか、そそらない?看板が多かったんですが、鳴子商店街は、昔ながらの気概を感じるタイプフェイスにたくさん出逢えました。これは衣料品店です。「アパッチ!」という感じでしょ。なぜに衣料品店?というのもまた。
山形ナンバ
山形ナンバー。「形」がかわいいですね。持って帰りた… 略。