trivial records

trivial recordsは2006年12月〜2011年7月に田北/triviaが綴っていたブログです。
すでに更新していませんが、アーカイブとして公開しています。

押し花絵

大牟田へ。cafe nei…が目的ではなく、今回はその隣りの杉野押し花美術館が深く関わっている「世界押し花絵芸術祭 in 大牟田2007」が目的です。もちろん仕事。ぼくが何に関わってるかというのは、ここでは内緒?に。

で、押し花。
このイベントに行く前、後輩から「押し花なんてマニアックですね」と言われる。マニアック… とんでもないです。とにかくすごい人でした。ツアーバスが全国から続々。平日なのに。若い人で30代後半。上は80歳くらいのおばあちゃんまで。9割は女性。あまりに多くて、香水に酔ってしまうほど。。みなさんほんと活き活きしてました。というか、必死…に近いかも。

なぜ大牟田でこのようなイベントが開催されたかというと、「押し花絵」の発祥の地が大牟田だからです。杉野さんという方が、約25年前に草花の色素を保ちながら乾燥させる技術を開発、押し花絵の作品を作り始め、現在に至るというわけです。

元々化学畑にいらっしゃった方なんですが、なぜ押し花に…というのは、長くなるので割愛。今回、海外の押し花絵も展示されていましたが、海外に元々「押し花文化」があったわけではありません。ポプリや標本を目的とした草花の乾燥保存は馴染みがありましたが、「押し花絵」はまさしく大牟田が作り出した文化なのです。

もちろん、技術が開発されただけではここまで浸透するわけはなく。約20年前から某A社によりとある仕組み(ビジネスモデル)が導入され、ここまでの押し花人口(市場)が拡がりました。そのきっかけの一端を、某大手通信業者も担っています。

さきほど「必死」と書きましたが、それはみなさん自分たちで作品を作っているからなんですね。カルチャースクールとか、お家とかで。今回も押し花絵コンクールと題して、全国から作品が集まりました。自分たちの作品を紹介したり、お友達の作品を探したり。素敵だと思える作品の手法をじっくり観察したり… そんな感じでみなさん楽しんでらっしゃるのです。ちなみにカルチャースクールで有名な某B社だけで、押し花部門の年商は約35億。決して「マニアック」ではないことが分かると思います。

押し花絵。それはいわゆる「クラフト」です。最近、クラフトの類の本が増えてきたような気がしませんか? パッチワーク、アクセサリー、バッグ、あみもの…エトセトラ。正確には「雰囲気の種類が増えている」と言った方がいいかもしれません。おしゃれカフェ風?のものだったり。

歴史の浅いこの「押し花絵」に関しても、これからもっと若い人向けの媒体が増えていくでしょう。クラフト業界を深く見ていくと、実によくできたビジネスモデルが構築されてるんですね。それに裏付けられた市場が新たなベクトルを見いだす側面と、その流れと葛藤しながら?作り手の美意識が細分化・先鋭化していく部分とが、今後より一層、顕在化していくはずです。

話は飛びますが、一般的な解釈の「クラフト」「アート」「デザイン」の違いって何だと思います?
近年ますますわかりにくくなってきてるはずです。デザイン、特に地域づくりに関わる人たちは、この違いについて自分なりの答えを見つけてほしい気がします。時折、この「普通の現象」を避けている人たちがたくさんいるように思えてしまうのです。そういう人たちは、東京に行った方が納得いく仕事ができるんじゃないかな。どっちが(社会にとって)好ましいとか、そういう問題じゃなく。

あ、会場を後にしたあと、(結局)cafe nei で舌鼓。かぼちゃのケーキがうまかったな。